院長コラム

ガーネットスター

2022年08月01日

子供たちがまだ小さいのころ、よく池田の児童文化センターのプラネタリウムへ連れて行きました。何年も通っているうちに、太陽の沈む方向や月の満ち欠け、星の名前や星座をめぐる神話などを自然に覚えていきました、子供達も小学校の高学年になると、もう付き合ってくれなくなります。それでも毎月一回は一人で出かけていき、解説員のYさんや星のおっちゃんことNさんの名解説に耳を傾けます。公開のプラネタリウムの中では、日本最小で直径4.5メートルの可愛らしいドームに、全天で3600個(5等星)までの恒星と5つの惑星、それに月の満ち欠けを映し出すことができます。500万もの星を映し出す伊丹市のメガスターとは好対照ですが、ドームの灯りをすべて消して、すぐ真上にある天上界を眺めると、数えきれぬほどの星々が燦然と輝きます。最近はコロナの影響で、入場制限やプログラムの短縮があり、すこし寂しい思いがしますが、20席ほどの小さなプラネタリウムは、いつも解説員と観客の一体感が抜群です。(現在は 週末のみの予約制です。)

(池田児童文化センターのHPより)

先月にガラス装飾の話をしましたが、深紅のガラス宝飾をみた時、真っ先に思い出したのが、ガーネットスターの事でした。この星は約2年ほどの周期で3.6等星から5.1等星まで明るさを変える変光星で、肉眼では観測しにくい星ですが、全天でもっとも赤い超巨星です。赤い恒星といえば、蠍座のアンタレス、オリオン座のペテルギウスなどが有名ですが、ケェフェウス座のガーネットスターの赤さは半端無く、小さな双眼鏡でもその異様な紅色が見て取れます。はじめてこの星を見たウィリアム・ハーシェルは、あまりの深い赤さに驚いて「ざくろ石」と名づけました。ガーネットスターが赤い理由はその表面温度にあります。他の恒星よりもかなり低くて2千度程度しかありません。(ちなみに太陽の表面温度は6千度です。)太陽からは、3500光年も離れた距離にありますが、太陽の35万倍もの光を放っています。しかも、その大きさは直径が太陽の1420倍もあるという赤色超巨星で、これを太陽の位置に置くと、木星の軌道をも軽く飲み込んでしまうほどの大きさです。この夏、旅先に小さな双眼鏡を持っていって、お子様や大切な人と一緒に星空を眺めてみるのはいかがでしょう。今の時期なら、銀河鉄道の夜に登場する白鳥座のくちばしアルビレオの二重星がとても奇麗です。光害のない山や海に出かけて、コロナ禍の憂さをとばしてください。もちろん 感染対策はお忘れなく。

 (ケフェウス座 μ変光星-ガーネットスター)

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