2020年10月23日

月のクレーターにその名を残すジョルダーノ・ブルーノとはどんな人物だったのでしょうか。肖像画でも判るように、なかなかのイケメンですね。ブルーノはルネッサンス期イタリアのドミニコ派の修道士です。しかし　教会の教義にことごとく反発した結果、故郷イタリアを追われ　欧州諸国を放浪します。異国での放浪生活の中で　いろいろな科学者や古書と出会い、ブルーノの知見は中世キリスト教の常識を打ち破って広がっていきます。大宇宙の構造や、そこでの知的生命体の存在ーー。そして　最後は　太陽系は、宇宙に無数にある同様の星々の一つで、それらの星々は太陽系と同様に複数の惑星を持っていて、それらには生命が宿っていると唱えています。ブルーノは異端審問にかけられ１６００年（関ヶ原の合戦の年）に処刑されてしまいました。

さて前回述べた１１７８年の月面の発光現象が、本当にジョルダーノ・ブルーノ　クレーターを形成した大隕石の衝突だったのでしょうか。実は、月はそのときの衝突で今も揺れているという説があるのです。アポロ計画で月面に設置された反射鏡のおかげで月の揺れを厳密に計る事が出来ますが、この９００年前の衝突が今でも月をわずかに揺らしている(秤動＝ひょうどう）と考えれば、つじつまが合うのです。しかし、２００７年に打上げられた日本の月探査衛星かぐやの高感度カメラのデーターのおかげで、ジョルダーノ・ブルーノの地形を詳細に分析する事が可能になり、このクレーターは確かに新しいが、その形成年代は数百万年前である事が明らかになりました。今でも月を揺らしている９００年前の衝突とクレーターの形成。そのクレーターにつけられたルネッサンス期の天才修道士の名。こんなロマンチックな学説を現代科学は見事に否定しました。
私の中の月兎がまた一匹消えていきました。

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