2019年07月20日

２０年くらい前に　医師会の認定産業医の資格を取りました。当時は　産婦人科専門の産業医は少なかったのですが、勤労妊婦さんの生活指導や女性のメンタルヘルスなどに応用でき、講演活動など仕事の幅が広がりました。

女性を取り巻く労働環境の変化で職場の産業医に求められる役割も徐々に変化してきたように思います。最近は、働き方改革に伴う長時間労働の問題や職場におけるセクハラ・パワハラの問題がよく取り上げられます。 ある製薬会社で職場における男女の役割について、性差医学（男女の生理的な違いを考慮した医学）の観点から講演を行いました。男性は、職場における上下（縦）関係や同僚友人などの横関係を駆使して　糸を紡ぐ様に人脈を構築します。それに対して、女性は職場、地域、家庭などと関わる中で、自分との距離感や相性を重視して、蜘蛛が同心円状に巣を張るような人間関係を構築しているように思います。女性にとって、愛する家族や気のあう親友はかけがえのない存在です。この違いを考慮しなければ職場で思わぬ行き違いがおこります。男性は組織や義理や先例を大切にしますし、女性は家庭や友情やひらめきを大切にするでしょう。もちろん、どちらの場合も行き過ぎは禁物。企業は利潤を追求するものという固定観念にとらわれ、他者への思いやりを忘れ利己主義や拝金主義に走ったら、社会の潤いはなくなり男女共同参画社会なんて邯鄲の夢に終わるでしょう。

江戸時代に豊後の国で開業されていた医師の三浦梅園先生のお言葉です。「限りない人の欲を、限りある財宝で償おうとすれば、その結果は山積する借金と実業の低迷を招き、人がうるおい、社会が振興することはない。」まさに現在の日本の社会を言い当てていると思いませんか。自分自身、何の為に働いているのかを　もう一度考えてみたいと思います。

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