院長コラム

フェムテック 女性の体の新常識

2020年12月18日

女性の社会進出が、あらゆる部門におよんでいる昨今でさえ、日本医師会の産業医の講習会では、メンタルヘルスだの、働き方改革だの、パワハラ・セクハラだの、と同じようなお題目が並んでいて、性差医学に基づいた提言はほとんど見られません。そんな男性中心の大企業に対して、ベンチャー企業の側から、性差を意識した新しいテクノロジーが社会を変えていくという番組がありました。(2020年11月24日放送 NHKクローズアップ現代 「女性の体の新常識 フェムテックで社会が変わる」)ここでいう「フェムテック」とは、フィーメル(女性)とテクノロジーを合わせた用語で、最初はベンチャーが資本家からお金を集める為の方便くらいにしか思っていませんでしたが、国営放送がゴールデンタイムに取り上げたとなると、話は違ってきます。番組で取り上げられたフェムテックは多方面に及びます。たとえば 月経困難症による企業や個人の損失は国内で年間に6800億円にもおよび、ピルを中心とした治療薬の普及が望まれます。赤ちゃんが欲しい時にタイミングを合わせる為の基礎体温は、スマホの画面上で簡単に医療者と共有でき、アドバイスを受けられます。昨今話題のPCR法は従来無菌と考えられていた子宮内に乳酸菌を中心とした細菌のフローラ(草叢から転じて様々な細菌の共同体)の存在を明らかにしました。やがて流産や早産のメカニズムもより明らかになるかもしれないのです。

社会的にも、男性の育休や子育支援などに加え、産褥期の女性の健康(産褥の褥は寝間着の意味です。いわゆる産後の肥立ちですね)にも目が向くようになってきました。まだ本格的社会復帰の難しい産褥期の女性支援の重要性が認識され、自治体の産後ケアー事業には様々なサービスが提供されるようになりました。

これらは、私がかねてから考えてきた事と、ずいぶん共通点があります。数年前から製薬会社や病院などに出向いて、男性と女性の考え方の違いや女性の性周期の事などをお話ししてきました。学生さんも含めた若い女性への性教育やピル(LEP)の普及にも力を入れてきました。何よりも、職種の垣根を越えて連携する事の重要性を感じ、開業助産師さんや薬剤師さん、理学療法士さんやスポーツクラブのインストラクター、このような方々と一緒に仕事をして来ました。それぞれの職能のもつ力を、女性の味方に変えていく。これも未来へ向けてのフェムテックではないでしょうか。

 

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