ウイスキーの語源はケルト語のウスケ・ボー「生命の水」。穀物を糖化・発酵させたアルコールを、蒸留して作られます。現在のような琥珀色のお酒になったのは、18世紀の始めのこと。税吏の目を逃れる為、シェリーの空樽に隠して貯蔵し熟成する方法が、生み出されてからですから　そんなに古い話でもありません。日本にウイスキーが入ってきたのは、ペリーの黒船来航の時（1853年）だと云われています。

　「ウイスキーの５大産地は、スコットランド、アイルランド、アメリカ、カナダ、それに日本や。一つの醸造所でつくったウイスキーだけを瓶詰めしたものを、シングルモルトって云うんやで。熟練のブレンダーがいろんなウイスキーを、絶妙にブレンドし、バランスのとれた味や香りを醸し出しているのが、ブレンデッドウイスキーや。」若い頃に、英国に今も残る伝統ある蒸留所をみてまわった事のあるT君の蘊蓄話が続きます。「このボトルにある寿屋というのが、我がサントリーの前身で、大正時代からある老舗やで。」そういえば前回の雁風呂のコマーシャルに登場した山口瞳氏も寿屋の広告担当の社員だったとか。「日本にウイスキーを持ってきたのは、ニッカウヰスキーのマッサンとちゃうの。竹鶴のマッサンは、広島の竹原の出身で、母と同郷だよ。」と、私が混ぜ返すと「スコットランドで製法を学んだ竹鶴政孝さんは、余市の蒸留所の創業者や。サントリーは鳥井信治郎の山崎の蒸留所から始まっている。戦前から日本のウイスキー造りは盛んだったんやね。」「確か逸翁と鳥居信治郎さんは、兄弟だったよね。」「鳥居さんは、日本で最初にヌードポスターを作って有名になったよね。」「美女と洋酒を愛でるーー戦前にもそんな平和な時代もあったんだな。」笑顔で雑談を聞いていたMさんが、そっと教えてくれました。「戦後、進駐軍に接収されないように隠しておいた寿屋の樽からブレンドしたのが、この菊の御紋のウイスキーなんですよ。」

G山荘での夜会は、歴史とウイスキー論議で盛り上がります。「戦争と云えば、当時のイギリスの宰相チャーチルもウイスキーが大好きだったようだね。ビールなんかのんでいる野郎（ドイツ人）に負けてたまるか、と国民を鼓舞していたとーー。」「チャーチルが好んだのは、ジョニーウオーカー、連合軍総司令官のアイゼンハワーは、アメリア人らしくワイルドターキー、ついでに云うと吉田茂や田中角栄はオールドパーって所だね。」「ヒットラーは　生真面目で酒もタバコもやらなかったそうだね。酒でものまないと独裁者は狂気の沙汰になるのかな。」「でもアル中の指導者というのもちょっとねーー。」エンジニア会社の会長のN君や紅一点のTさんも話の輪に加わりにぎやかです。「酒は飲んでものまれるな。いつでも　紳士的に、理性をたもってって事やな。」ここは　オーナーのK君が締めくくってくれました。